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G検定を受けた話

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 もう半年ほど経過してしまったのですが、タイトル通りG検定なるもの受けました。記録のために受験記を残しておくのも良いかなと思い立ち、筆を取った(パソコンだけど)次第です。なぜ受けようと思ったかの動機から、勉強に使った参考書、勉強法などをまとめておきます。

受けようと思った動機

 私は某製薬企業で計算化学系の仕事をしていますが、ここ数年は特に自分の市場価値というものを意識するようになりました。情報収集に使っているTwitterでも、身の回りでもここ5年ほどで大分転職が一般的になってきたように思います。自分のしたい仕事をし続けたいのであれば、常に転職できる状態を維持する必要があり、そのためには市場価値を客観的に示せる必要があるのではないかと考えました。研究職の場合、自分の能力を客観的に示せるものとしては以下のものがあると思います。

  1. PhD含む資格
  2. 論文や特許
  3. 学会などでの対外発表

計算やITに限って言えばKaggle, AtCoderなどのコンペ実績やGithubでのコミットなども有効な指標になっていくかも知れません。これらの中で、製薬企業では2の難易度はかなり高いです。創薬プロジェクトに関する内容、特に構造式を出せるのはプロジェクトが終了するか、特許を出してからになるためです。プロジェクトは3-5年ほど続く場合が多いので、忘れた頃に出す機会がやってくるような感じです。特許も他の業界と比べると特殊で、物質特許が基本になり、成功したものしか出せなかったりするのでさらに難易度は上がります。また、私の仕事は物を作り出す訳ではないので、特許に名前は載せてもらえるかもしれませんが、メインの業績にはなり辛いという問題もあります。対外発表については、自分の会社は比較的寛容であり、毎年できるようにネタを考えています。しかし、2020年はコロナの影響で様々な学会が中止やオンライン開催になり、モチベーションが上がらず一度も発表できませんでした。自分は現地に行く旅程も含めて参加するのが好きだったのだなと自覚しつつ、今年も同じような状況は続きそうなので反省していきたいところです。長くなりましたが、昨年は2,3共に難しい状況になったので、何か資格で取れないかと探し始めたのがきっかけです。

G検定、E資格とは

 普段の仕事内容に関係しそうな資格がないか調べたところ、目をつけたのがG検定、E資格、統計検定でした。実は統計検定2級も取得しようと勉強しているのですが、こちらは別エントリでまとめるとして、今回はG検定とE資格についてまとめます。G検定とE資格は共に一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催、認定している資格試験です。格としてはG<Eで、G検定はジェネラリスト向け、E資格はエンジニア向けとなっています。諸々まとめると以下のようになりますが、まだ新しい資格ということもあり変更も多いようですので、最新の情報は公式サイトでご確認することをお勧めします。一般社団法人日本ディープラーニング協会【公式】

G検定

  • ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する。
  • 試験時間:120分(多肢選択式・220問程度)
  • 受験料:一般:12,000円(税抜)、学生:5,000円(税抜)
  • 試験形式:オンライン受験
  • 合格率:60%前後
  • 年三回実施(3月、7月、11月)

E資格

  • ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する。
  • 試験時間:120分(多肢選択式・100問程度)
  • 受験料:一般:33,000円(税込)、学生:22,000円(税込)、会員:27,500円(税込)
  • 試験形式:指定の会場から希望した会場で受験
  • 合格率:65%前後
  • 年二回実施(8月、2月)
  • JDLA協会が認定した講座を修了する必要がある

受験料はどちらも結構お高いのですよね・・3万円以上出して落ちたら辛いですね。。新しい資格ということもあり、会社の自己研鑽支援などの対象にもなっていないのが痛い所です。特にE資格は指定された講座の受講料も含めると二桁万円かかるレベルなので、なかなか覚悟がいる資格だなと思います。

2020年第2回G検定の受験料が半額になっていた

本当はE資格を狙いたいなと思っていましたが、費用も期間もかなりかかって2020年中に受けるのは厳しいなと思っていたところ、G検定の受験料半額のニュースが出てきました。
次回7月4日G検定、受験料半額での実施を決定 - 一般社団法人日本ディープラーニング協会【公式】
これはありがたいということで、試験2ヶ月前くらいの時期でしたが受けてみることにしました。

勉強方法

 G検定は新しい試験ということもあり過去問が出回っておらず、どのような問題形式なのかイマイチつかめませんでした。受験した経験から言うと、計算問題や難しい問題はほとんどなく、知識問題がほとんどでした。120分で220問という設定からも伺いしれるように思いますね。歴史的背景や法規制についても出題されるので、普段機械学習ディープラーニングになじみがある人でも、以下参考書の内ひとつは読んでおいた方がいいと思います。
詳しい傾向と対策を知りたい方はhitoshiさんのサイトが参考になります。詳しい勉強法や当日のテクニックについても解説されています。
otokuget.net

前提知識

 自分の勉強開始前の状況としては、機械学習Python、深層学習は仕事でもちょくちょく使うので基本的なことは知っている状態でした。微分積分線形代数は高校や大学の教養課程でやったなあという程度です。ちなみに数学、物理は苦手でした。

使った参考書

深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト

 まずは定番の公式テキストを購入して読み通しました。内容的にはこれだけで受かるのには必要十分だと思います。1周読み通した後、ざっくり2週目も通読しました。


人工知能は人間を超えるか

公式サイトで推薦されている松尾先生の著書も読んでみました。上の後に読んだので公式テキストの復習を兼ねるような使い方になりましたが、読み物色が強くてサクサク読めるので、導入として読むのもありかと思います。電子書籍は安くてよいですね。


その他役立った参考書

 試験対策のために読んでいたわけではないですが、過去に読んでいた知識が役立ったと感じる書籍です。

ゼロから作るDeep Learning

ディープラーニング入門書の定番ともいえる良書です。実装だけでなく基本的な仕組みも解説してくれているので役立ちました。


詳解ディープラーニング 第2版

RNNや自然言語処理についての解説が非常に良かったです。PytorchやTensorflowの新バージョンでの実装法も学べるのでお勧めです。


試験当日と結果

 2020年7月4日の回で受験しました。問題数は多いですが、数分残しで時間内に解き終わることができました。手ごたえ的には80-85%程度の正答率だったと思います。2020年7月16日にメールで結果が届き、無事合格していました。合格者には他にも以下のものが送られてきました。

  • 合格者コミュニティCDLEの案内
  • 名刺などに付けるロゴ
  • 合格証のzipファイル

まとめ

 無事合格したのですが、資格がどのような効果があるのかは正直よく分かりません。実務担当者というよりはマネージャーや上層部、ビジネス関係の人が受けると有効な試験だと思います。部下が提案してきたことへの理解や、どのような事ができそうでどのような事が難しそうか判断可能になりよいのではと思いました。今年はE資格の受験も含めて検討していきたいと思っています。